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「どうですか、掛りさうかね」
「いや、それが――」
房一は無意識に微笑しながらその眼を迎へた。正文はそこに、医者といふよりはまだ世間慣れのしない弁護士のやうな男が、土饅頭を思はせるやうな円まつちい顔を一種恭々うやうやしげな面持でかしこまつているのを、その厚いふくれた唇が不器用な微笑を浮べているのを見た。それは何となく可笑をかしみのあるものだつた。
「脚気の方は?」
膿盆だの鋏、脱脂綿の袋などがまだ散らかつたまゝになつているのを片づけはじめた。
「や、先日はどうも――」
「ほんとうに火事があつたのかい」
「かりに、おれが真正面から反抗的に出て、それがために住みにくくなつたとしても、同じことだ」
「ですが、一体財産譲渡つて云ふのはいつのことなんです、大分前ぢやないですか」
「入りましたよ。それがねえ、穴の中は苔が生えたやうな、水たまりもあつてね、やつとこさ奥まで行つてみたんだが、まはりの土はぼろぼろ落ちるし、何のことはない洞穴でさあね、――それでも連中はあつちこつち突ついてみてたがね、含有量はまあもつと試掘してみなけりや判らんさうですよ」
「途中から帰つて来たんだよ」
「ごめん下さい」